インフラエンジニアにとって、AWSスキルは今や必須のスキルセットとなっています。クラウドシフトが加速する現代のIT業界では、オンプレミス環境の知識だけでは市場価値を維持することが難しくなっています。本記事では、なぜAWSスキルがインフラエンジニアに必要なのか、どのようなスキルを習得すべきか、そして効率的な学習方法まで実践的に解説します。AWS認定資格の取得順序や、キャリアアップにつながる具体的なメリットもご紹介しますので、これからAWSを学びたい方はぜひ参考にしてください。
なぜインフラエンジニアにAWSスキルが必要なのか
現代のインフラエンジニアにとって、AWSスキルは単なる「あると良いスキル」ではなく、キャリアを左右する必須スキルになっています。企業のクラウド移行が急速に進む中、オンプレミス環境のみの経験では対応できない業務が増加しています。ここでは、インフラエンジニアにAWSスキルが求められる3つの理由を解説します。
クラウドシフトの加速とAWSのシェア
世界のクラウド市場において、AWSは30%以上のシェアを持つトップベンダーです。Gartnerの調査によれば、2023年時点で全世界のパブリッククラウドサービス市場の約3分の1をAWSが占めており、Microsoft Azure、Google Cloudを大きく引き離しています。特に日本国内では、大手企業から中小企業まで幅広くAWSが採用されており、金融機関や官公庁でもAWS導入事例が増加しています。このシェアの高さは、インフラエンジニアとしてAWSスキルを習得すれば、より多くの企業で活躍できることを意味しています。クラウド市場全体も年率20%以上の成長を続けており、今後もAWSの需要は拡大する見込みです。
オンプレミスからクラウドへの移行トレンド
多くの企業がオンプレミス環境からクラウドへの移行を進めています。その理由は、初期投資コストの削減、スケーラビリティの向上、運用負荷の軽減など多岐にわたります。例えば、自社でサーバーを購入・設置する場合、数百万円から数千万円の初期投資が必要ですが、AWSなら使った分だけの従量課金で済みます。また、急激なアクセス増加にも自動スケーリングで対応できるため、ビジネスの変化に柔軟に対応できます。経済産業省の「DX推進ガイドライン」でも、レガシーシステムからの脱却とクラウド活用が推奨されており、2025年までに多くの企業がクラウド移行を完了する見込みです。このトレンドに対応できるインフラエンジニアの需要は非常に高まっています。
求人市場で求められるAWSスキル
転職市場を見ると、インフラエンジニアの求人の約60%以上がAWSスキルを必須または歓迎条件としています。Indeed JapanやGreen、ビズリーチなどの求人サイトで「インフラエンジニア」を検索すると、AWS経験者の年収は未経験者と比較して100万円〜200万円高い傾向が見られます。特にAWS認定資格保有者は、ソリューションアーキテクトアソシエイトレベルで年収600万円〜800万円、プロフェッショナルレベルで年収800万円〜1,200万円の求人も珍しくありません。フリーランス案件でも、AWS案件の単価は月額80万円〜150万円と高水準です。このように、AWSスキルは転職市場での競争力を大きく高める要素となっています。
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インフラエンジニアが習得すべきAWSスキル
AWSには200以上のサービスがありますが、インフラエンジニアとして最初に習得すべきは、コンピューティング、ネットワーク、ストレージ、データベースの4つの基盤サービスです。これらはオンプレミス環境の知識と関連性が高く、比較的理解しやすい分野です。ここでは、実務で頻繁に使用される主要サービスとその習得ポイントを解説します。
コンピューティング(EC2・Lambda)
Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)は、仮想サーバーを提供するAWSの中核サービスです。インスタンスタイプの選定、AMI(Amazon Machine Image)の作成、Auto Scalingによる自動スケーリング、Elastic Load Balancerとの連携など、習得すべき要素は多岐にわたります。オンプレミスの物理サーバー管理経験があれば、CPU・メモリ・ストレージの概念は同じなので理解しやすいでしょう。一方、AWS Lambdaはサーバーレスコンピューティングサービスで、サーバー管理不要でコードを実行できます。イベント駆動型の処理や、定期的なバッチ処理に最適です。例えば、S3にファイルがアップロードされたら自動的に処理を開始する、といった自動化が簡単に実現できます。EC2とLambdaを使い分けることで、コスト最適化と運用効率化が可能になります。
ネットワーク(VPC・Route53)
Amazon VPC(Virtual Private Cloud)は、AWS上にプライベートネットワークを構築するサービスです。サブネット設計、ルートテーブルの設定、インターネットゲートウェイやNATゲートウェイの配置、セキュリティグループとネットワークACLによるアクセス制御など、オンプレミスのネットワーク設計と共通する概念が多く含まれます。特にCIDRブロックの理解、パブリックサブネットとプライベートサブネットの使い分けは重要です。Amazon Route 53はDNSサービスで、ドメイン名の管理、ヘルスチェック、トラフィックルーティングを提供します。複数リージョンへのフェイルオーバー設定や、地理的なルーティングも可能です。VPCとRoute 53を組み合わせることで、高可用性とセキュアなネットワーク環境を構築できます。
ストレージ(S3・EBS)
Amazon S3(Simple Storage Service)は、オブジェクトストレージサービスで、画像・動画・ログファイル・バックアップデータなど、あらゆる種類のデータを保存できます。99.999999999%(イレブンナイン)の耐久性を持ち、ストレージクラス(Standard、Infrequent Access、Glacierなど)を使い分けることでコスト最適化が可能です。バージョニング機能やライフサイクルポリシーを設定すれば、自動的に古いデータをアーカイブできます。Amazon EBS(Elastic Block Store)は、EC2インスタンスにアタッチするブロックストレージです。データベースやアプリケーションのデータ保存に使用され、スナップショット機能で簡単にバックアップできます。SSD(gp3、io2)とHDD(st1、sc1)のタイプがあり、用途に応じて選択します。
データベース(RDS・DynamoDB)
Amazon RDS(Relational Database Service)は、MySQL、PostgreSQL、Oracle、SQL Serverなどの主要なリレーショナルデータベースをマネージドサービスとして提供します。パッチ適用やバックアップが自動化されるため、運用負荷を大幅に削減できます。Multi-AZ構成で高可用性を実現し、リードレプリカで読み取り性能を向上させることも可能です。インフラエンジニアとしては、適切なインスタンスサイズの選定、パフォーマンスチューニング、バックアップ戦略の設計が重要なスキルになります。Amazon DynamoDBはNoSQLデータベースで、ミリ秒単位の低レイテンシーと無制限のスケーラビリティが特徴です。キーバリュー型のデータ構造で、IoTデータやセッション管理、リアルタイム分析に適しています。RDSとDynamoDBを使い分けることで、システム要件に最適なデータベース環境を構築できます。
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AWS認定資格の種類と取得順序
AWS認定資格は、スキルを客観的に証明できる有効な手段です。資格取得を通じて体系的に学習でき、転職市場でも高く評価されます。AWSには12種類の認定資格がありますが、インフラエンジニアには特に3つのレベルが重要です。ここでは、効率的な資格取得の順序と各資格の特徴を解説します。
入門レベル:AWS認定クラウドプラクティショナー
AWS認定クラウドプラクティショナー(CLF-C02)は、AWSの基礎知識を証明する入門資格です。AWSクラウドの概念、主要サービスの概要、セキュリティ、料金体系などが出題範囲で、技術的な深い知識は求められません。試験時間は90分、問題数は65問、合格ラインは正答率70%です。AWS未経験者や、クラウドの基礎から学びたい方に最適で、学習期間は1ヶ月程度が目安です。この資格は、営業職やマネージャーなど非技術職にも推奨されますが、インフラエンジニアにとってはAWSの全体像を把握する第一歩として有用です。取得費用は15,000円(税別)で、オンライン受験も可能なため、気軽にチャレンジできます。
アソシエイトレベル:ソリューションアーキテクト・SysOps
アソシエイトレベルには3つの資格がありますが、インフラエンジニアにはソリューションアーキテクトアソシエイトとSysOpsアドミニストレーターアソシエイトが特に重要です。どちらも実務レベルのスキルを証明する資格で、転職市場での評価も高くなります。両方取得することで、設計と運用の両面で専門性をアピールできます。
ソリューションアーキテクト アソシエイト
AWS認定ソリューションアーキテクト アソシエイト(SAA-C03)は、最も人気の高いAWS資格です。AWSを使用したシステム設計能力を証明し、EC2、VPC、S3、RDS、ELB、Auto Scalingなどの主要サービスを組み合わせた最適なアーキテクチャ設計が求められます。試験時間は130分、問題数は65問、合格ラインは72%程度です。高可用性、コスト最適化、セキュリティ、パフォーマンスの4つの設計原則に基づいた問題が出題されます。学習期間は2〜3ヶ月が目安で、ハンズオン経験があればより理解が深まります。この資格を取得すると、年収が50万円〜100万円アップする事例も多く、キャリアアップに直結する資格です。
SysOpsアドミニストレーター アソシエイト
AWS認定SysOpsアドミニストレーター アソシエイト(SOA-C02)は、AWS環境の運用・管理スキルを証明する資格です。CloudWatch によるモニタリング、Auto Scaling の設定、バックアップとリカバリ、コスト管理、トラブルシューティングなど、運用に特化した知識が問われます。試験時間は130分、問題数は65問で、一部ラボ問題(実際にAWSコンソールを操作する問題)が含まれる点が特徴です。ソリューションアーキテクトが「設計」に重点を置くのに対し、SysOpsは「運用」に重点を置いています。現場での運用経験が活かせる資格なので、オンプレミス環境での運用経験があるインフラエンジニアには取得しやすいでしょう。
プロフェッショナルレベルへのステップアップ
アソシエイトレベルの資格取得後、さらなるスキルアップを目指すなら、ソリューションアーキテクト プロフェッショナル(SAP-C02)やDevOps エンジニア プロフェッショナル(DOP-C02)に挑戦しましょう。これらの資格は、複雑なシステム設計や、大規模環境の移行、マルチアカウント管理など、高度なスキルが求められます。試験時間は180分と長く、難易度も大幅に上がりますが、取得すれば業界トップクラスのエキスパートとして認められます。プロフェッショナル資格保有者は市場価値が非常に高く、年収1,000万円以上の求人も狙えます。ただし、実務経験2年以上が推奨されるため、まずはアソシエイトレベルで実践経験を積んでからチャレンジすることをおすすめします。資格は3年ごとに更新が必要なので、継続的な学習も重要です。
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AWSスキルを効率的に習得する方法
AWSスキルは、座学だけでは習得できません。実際に手を動かしてサービスを触ることが最も重要です。幸い、AWSには無料で学習できる環境が整っており、初心者でもコストをかけずにスキルアップできます。ここでは、効率的にAWSを学ぶための具体的な方法を3つ紹介します。
AWS無料利用枠でハンズオン学習
AWSアカウントを作成すると、12ヶ月間の無料利用枠(Free Tier)が利用できます。EC2のt2.micro/t3.microインスタンスを月750時間、S3ストレージを5GBまで、RDSを月750時間など、主要サービスが無料で使えます。この無料枠を活用すれば、コストを気にせずハンズオン学習が可能です。まずはEC2でWebサーバーを立ち上げ、VPCでネットワークを構築し、S3にファイルをアップロードする、といった基本操作から始めましょう。AWSマネジメントコンソールの操作に慣れたら、AWS CLIやCloudFormationを使ったインフラのコード化(IaC)にも挑戦してください。注意点として、無料枠を超えると課金されるため、CloudWatchで利用状況をモニタリングし、不要なリソースはこまめに削除することが重要です。AWS Budgetsで予算アラートを設定しておけば、想定外の課金を防げます。
おすすめの学習リソースと教材
AWS公式のAWS Skill Builder(旧AWS Training)は、無料で利用できる高品質な学習プラットフォームです。動画講座、ハンズオンラボ、模擬試験が揃っており、各認定資格に対応したコースが用意されています。日本語対応も進んでおり、初心者にも分かりやすい内容です。有料サービスでは、Udemyの「AWS認定ソリューションアーキテクト アソシエイト」コースが人気で、セール時には2,000円程度で購入できます。書籍なら、「AWS認定資格試験テキスト」シリーズ(SBクリエイティブ)が体系的で理解しやすいと評判です。また、AWS公式ドキュメントは最も正確な情報源なので、分からないことがあれば必ず参照しましょう。英語に抵抗がなければ、AWS公式ブログやre:Inventの講演動画も最新トレンドを学ぶのに最適です。
実務経験を積むためのアプローチ
学習した知識を実務で活かすためには、積極的に実践の機会を作ることが大切です。現在の職場でAWSプロジェクトがあれば、手を挙げて参加しましょう。たとえ小さなタスクでも、実際の本番環境での経験は貴重です。社内にAWS案件がない場合は、個人プロジェクトを立ち上げるのも効果的です。例えば、WordPressブログをEC2上に構築する、静的サイトをS3とCloudFrontで公開する、LambdaでSlackボットを作成するなど、実用的なアプリケーションを作ってみましょう。これらの成果物はポートフォリオとして転職活動でもアピールできます。また、クラウドソーシング(クラウドワークス、ランサーズ)で小規模なAWS案件を受注するのも、実践経験を積む良い方法です。最初は単価が低くても、実績を積めば高単価案件にステップアップできます。
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AWSスキルがもたらすキャリアの可能性
AWSスキルを習得することで、インフラエンジニアのキャリアは大きく広がります。年収アップはもちろん、働き方の選択肢も増え、長期的なキャリア形成において大きなアドバンテージとなります。ここでは、AWSスキルがもたらす具体的なキャリアメリットを3つの観点から解説します。
年収アップと転職市場での優位性
AWSスキルを持つインフラエンジニアの年収は、未経験者と比較して明確に高い傾向があります。レバテックキャリアやマイナビITエージェントのデータによれば、AWS経験3年以上のインフラエンジニアの平均年収は650万円〜850万円で、オンプレミスのみのエンジニアと比べて100万円〜200万円高くなっています。特にAWS認定ソリューションアーキテクトプロフェッショナル資格保有者は、年収1,000万円を超える求人も豊富です。転職市場でも、AWS経験者は引く手あまたで、複数の企業から内定を得られるケースが多くなっています。また、リモートワーク可能な求人も多く、地方在住でも大手企業の案件に参画できるため、ワークライフバランスを重視したキャリア選択も可能です。
クラウドエンジニアへのキャリアパス
インフラエンジニアからクラウドエンジニアへのキャリアチェンジは、AWSスキルがあれば非常にスムーズです。クラウドエンジニアは、クラウドインフラの設計・構築・運用を専門とする職種で、需要が急増しています。オンプレミス環境の知識をベースに、AWSの主要サービスとアーキテクチャ設計スキルを習得すれば、即戦力として評価されます。さらにステップアップして、クラウドアーキテクトやSRE(Site Reliability Engineer)、DevOpsエンジニアといった高度な専門職にも挑戦できます。これらの職種は年収800万円〜1,500万円の高収入が期待でき、技術的なやりがいも大きいです。AWSスキルは、こうしたキャリアパスの入り口として最適な選択肢です。
「【関連記事】:インフラエンジニアのキャリアパス完全ガイド|運用から設計・クラウド・SREへの道筋」
フリーランス・副業での活用
AWSスキルは、フリーランスや副業でも高い需要があります。レバテックフリーランスやフリーランススタートなどのエージェントを見ると、AWS案件の単価は月額80万円〜150万円と高水準です。週3日稼働の案件も多く、正社員と並行して副業することも可能です。また、クラウドソーシングでは、AWS環境の構築、EC2からECSへの移行、コスト最適化支援など、短期間のスポット案件も豊富にあります。こうした案件で実績を積めば、個人でAWSコンサルティングを提供することもできます。フリーランスとして独立すれば、年収1,500万円以上も現実的な目標となります。AWSスキルは、働き方の自由度を大きく高める武器になります。
まとめ:AWSスキル習得で広がるインフラエンジニアの未来
インフラエンジニアにとって、AWSスキルは今や必須のスキルセットです。クラウドシフトが加速する現代では、オンプレミス環境のみの経験では市場価値を維持することが難しくなっています。本記事では、AWSスキルが必要な理由、習得すべき主要サービス、認定資格の取得順序、効率的な学習方法、そしてキャリアメリットまで解説しました。
まず、EC2・VPC・S3・RDSといった基盤サービスから学習を始め、AWS無料利用枠を活用してハンズオン経験を積みましょう。AWS認定クラウドプラクティショナーから始めて、ソリューションアーキテクトアソシエイト、SysOpsアドミニストレーターアソシエイトへとステップアップすることで、体系的にスキルを習得できます。AWS Skill BuilderやUdemyなどの学習リソースを活用し、個人プロジェクトで実践経験を積むことが重要です。
AWSスキルを習得すれば、年収アップ、クラウドエンジニアへのキャリアチェンジ、フリーランスとしての独立など、多様なキャリアパスが開けます。まずは今日からAWSアカウントを作成し、無料枠で手を動かしてみることから始めてください。あなたのインフラエンジニアとしてのキャリアは、AWSスキルによって大きく広がります。
