インフラエンジニアは、企業のITシステムを支える重要な職種です。しかし、「具体的にどんな仕事をしているのか」「自分に向いているのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、インフラエンジニアの仕事内容を「要件定義」「設計・構築」「テスト」「運用保守」の4つの工程に分けて詳しく解説します。また、ネットワーク・サーバー・セキュリティの3つの専門領域における役割や、未経験から目指すための具体的な方法もご紹介します。
インフラエンジニアのキャリアに興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。
インフラエンジニアとは?基礎知識と役割
インフラエンジニアとは、企業のITシステムを支える基盤(インフラストラクチャー)を設計・構築・運用する技術者のことです。具体的には、サーバー、ネットワーク、データベース、セキュリティなどのIT基盤を整備し、システムが安定的に稼働するよう管理します。
IT業界において、インフラエンジニアは「縁の下の力持ち」とも言える存在です。アプリケーション開発者がソフトウェアを開発する際、その土台となるサーバーやネットワークを用意し、安定した動作環境を提供するのがインフラエンジニアの役割です。
近年では、クラウドサービス(AWS、Azure、Google Cloudなど)の普及により、オンプレミス環境だけでなくクラウド環境の構築・運用スキルも求められるようになっています。また、DevOpsやインフラの自動化(Infrastructure as Code)といった新しい技術トレンドにも対応できる能力が重要視されています。
インフラエンジニアの3つの専門領域
インフラエンジニアの仕事は、大きく「ネットワーク」「サーバー」「セキュリティ」の3つの専門領域に分けられます。
ネットワーク領域では、企業内のLANやインターネット接続、拠点間の通信網を設計・構築します。ルーターやスイッチの設定、通信プロトコルの理解、帯域管理などが主な業務です。
サーバー領域では、Webサーバー、データベースサーバー、メールサーバーなどの各種サーバーの構築と運用を担当します。LinuxやWindowsなどのOS設定、仮想化技術、クラウドプラットフォームの管理などを行います。
セキュリティ領域では、システム全体のセキュリティ対策を実施します。ファイアウォールの設定、不正アクセスの監視、脆弱性診断、セキュリティパッチの適用など、企業の情報資産を守るための対策を講じます。
多くのインフラエンジニアは、これらの領域のうち1つまたは複数を専門としながら、全体を理解した上で業務を行っています。
インフラエンジニアの仕事内容|4つの工程を詳しく解説
インフラエンジニアの仕事は、システム開発のライフサイクルに沿って「要件定義」「設計・構築」「テスト」「運用保守」の4つの工程に分けられます。それぞれの工程で求められる役割と具体的な作業内容を見ていきましょう。
要件定義|システム要件のヒアリングと計画
要件定義は、プロジェクトの最初の段階で行う重要な工程です。クライアントや社内の関連部署と打ち合わせを行い、「どのようなシステムが必要なのか」「どれくらいの規模が必要か」「予算はどの程度か」といった要件をヒアリングします。
具体的には、想定されるユーザー数、データ量、システムの可用性(稼働率)、セキュリティ要件などを確認し、それに基づいて必要なサーバー台数、ネットワーク帯域、ストレージ容量などを見積もります。例えば、「月間100万PVのWebサイトを構築したい」という要望に対して、必要なサーバースペックやトラフィック対策を提案します。
また、この段階で予算やスケジュールの制約を考慮しながら、最適なソリューションを提案することも重要です。オンプレミスとクラウドのどちらが適しているか、どのクラウドサービスを選択するかなど、技術的な判断が求められます。要件定義の精度がプロジェクト全体の成否を左右するため、コミュニケーション能力と技術的な知識の両方が必要とされる工程です。
設計・構築|インフラ環境の設計と実装
設計・構築フェーズでは、要件定義で決定した内容を基に、実際のインフラ環境を設計し、構築していきます。
設計段階では、ネットワーク構成図やサーバー構成図を作成し、IPアドレスの割り当て、ルーティング設定、負荷分散の方法などを詳細に決定します。可用性を高めるための冗長構成や、障害発生時の切り替え方法(フェイルオーバー)なども設計します。
構築段階では、実際にサーバーのセットアップ、ネットワーク機器の設定、ミドルウェアのインストールなどを行います。例えば、Webサーバー(Apache、Nginx)の設定、データベース(MySQL、PostgreSQL)のインストールと設定、ロードバランサーの構築などです。
クラウド環境の場合は、AWSのEC2インスタンス作成、VPCの設定、RDSのセットアップなどをコンソールやCLI、Infrastructure as Code(Terraform、CloudFormationなど)を使って実施します。近年では、手作業による構築ではなく、コード化されたインフラ構築(IaC)が主流になりつつあり、再現性と自動化が重視されています。
テスト|システムの動作確認と負荷試験
構築が完了したら、システムが正しく動作するか、要件を満たしているかを検証するテスト工程に入ります。
まず、単体テスト(ユニットテスト)として、各サーバーやネットワーク機器が個別に正しく動作するかを確認します。次に、結合テスト(統合テスト)で、サーバー間の通信、アプリケーションとデータベースの連携など、システム全体が正しく連携して動作するかを検証します。
性能テスト(負荷試験)も重要な作業です。想定されるアクセス数やデータ量を模擬的に発生させ、システムが問題なく処理できるかを確認します。例えば、ApacheJMeterやGatlingなどのツールを使って、Webサーバーに大量のリクエストを送信し、レスポンスタイムや処理能力を測定します。
セキュリティテストでは、ファイアウォールが正しく機能しているか、不正アクセスを防げるか、データの暗号化が適切に行われているかなどを確認します。脆弱性診断ツールを使ったスキャンや、ペネトレーションテスト(侵入テスト)を実施することもあります。これらのテストを通じて問題が発見されれば、設計や設定を修正し、再度テストを行います。
運用保守|システムの監視とトラブル対応
システムが本番稼働した後は、安定的に動作し続けるよう、日々の運用保守業務を行います。運用保守は、インフラエンジニアの仕事の中で最も時間を割く工程とも言えます。
日常的な監視業務では、Zabbix、Nagios、CloudWatch、Datadogなどの監視ツールを使って、サーバーのCPU使用率、メモリ使用量、ディスク容量、ネットワークトラフィックなどをリアルタイムで監視します。異常値が検出されれば、アラートが発生し、速やかに対応する必要があります。
障害が発生した際のトラブル対応も重要な業務です。サーバーダウン、ネットワーク障害、アプリケーションエラーなどが発生した場合、迅速に原因を特定し、復旧作業を行います。夜間や休日でも対応が求められることがあり、オンコール体制を組んでいる企業も多くあります。
定期的なメンテナンス作業として、OSやミドルウェアのアップデート、セキュリティパッチの適用、ログファイルの管理、バックアップの実施と確認などを行います。また、システムのパフォーマンスチューニングも継続的に実施し、より効率的で安定した運用を目指します。
さらに、システムの改善提案も運用保守の一環です。運用データを分析し、「ここをクラウド化すればコスト削減できる」「この処理を自動化すれば効率化できる」といった改善案を提案し、実装していくことで、システムの価値を高めていきます。
ネットワーク・サーバー・セキュリティ別の業務内容
インフラエンジニアの仕事内容は、専門領域によって異なります。ここでは、ネットワーク、サーバー、セキュリティの3つの観点から、それぞれの具体的な業務内容を紹介します。
ネットワークエンジニアの主な業務
ネットワークエンジニアは、企業内のネットワークやインターネット接続など、通信インフラを専門に扱います。
具体的には、ルーターやスイッチ、ファイアウォールといったネットワーク機器の設定と管理を行います。Cisco、Juniper、Yamahaなどのメーカーの機器を扱うことが多く、各機器のコマンドラインインターフェース(CLI)を使った設定作業が中心です。VLAN設定によるネットワークセグメント分け、ルーティングプロトコル(OSPF、BGPなど)の設定、QoS(通信品質制御)の実装などを担当します。
通信トラブルが発生した際のトラブルシューティングも重要な業務です。pingやtraceroute、Wiresharkなどのツールを使ってパケットの流れを追跡し、障害箇所を特定して修復します。また、ネットワークの帯域監視を行い、トラフィックが集中する時間帯や経路を分析し、最適化を図ります。
「【関連記事】:インフラエンジニアとネットワーク・サーバーエンジニアの違い|職種選択ガイド」
サーバーエンジニアの主な業務
サーバーエンジニアは、各種サーバーの構築と運用を専門に担当します。
Linux(CentOS、Ubuntu、Red Hat Enterprise Linuxなど)やWindows Serverを使ったサーバー構築が主な業務です。OSのインストールから始まり、必要なミドルウェア(Apache、Nginx、MySQL、PostgreSQLなど)のインストールと設定、ユーザー権限の管理、ディスク管理などを行います。
近年では、仮想化技術やコンテナ技術の知識も必須です。VMwareやHyper-Vを使った仮想マシンの作成・管理、DockerやKubernetesを使ったコンテナ環境の構築と運用も増えています。また、AWSやAzure、Google Cloudといったクラウドプラットフォームでのサーバー管理も重要なスキルとなっています。EC2、RDS、S3などのサービスを適切に選択し、コスト効率と性能を両立させた環境を構築します。
「【関連記事】:インフラエンジニアにAWSスキルが必要な理由|クラウド時代の必須スキルと資格」
セキュリティエンジニアの主な業務
セキュリティエンジニアは、システム全体のセキュリティを守る専門家です。
主な業務として、ファイアウォールやIDS/IPS(侵入検知・防御システム)の設計と運用があります。不正アクセスやサイバー攻撃からシステムを保護するため、適切なセキュリティポリシーを設定し、継続的に監視します。また、脆弱性診断を定期的に実施し、システムの弱点を発見して対策を講じます。OpenVASやNessusなどの診断ツールを使い、既知の脆弱性がないかスキャンします。
セキュリティインシデント(不正アクセスやマルウェア感染など)が発生した際の対応も重要な役割です。ログを解析して攻撃の手法や侵入経路を特定し、被害拡大を防ぐための措置を迅速に実施します。また、事後の再発防止策として、セキュリティパッチの適用、設定の見直し、監視体制の強化などを行います。
インフラエンジニアに求められるスキルと知識
インフラエンジニアとして活躍するためには、幅広い技術スキルと継続的な学習が必要です。ここでは、実務で求められる具体的なスキルと、取得すべき資格について解説します。
技術スキル
インフラエンジニアに求められる技術スキルは多岐にわたります。
まず、OS(オペレーティングシステム)の知識が基本です。特にLinux系OS(CentOS、Ubuntu、Red Hat Enterprise Linuxなど)のコマンド操作、シェルスクリプト作成、パッケージ管理、プロセス管理などは必須スキルです。Windows Serverの知識も、企業環境によっては重要になります。
ネットワークの知識も欠かせません。TCP/IPの仕組み、ルーティング、スイッチング、DNS、DHCP、VPN、ファイアウォールなど、ネットワーク技術の基礎から応用まで理解している必要があります。
近年ではクラウド技術の重要性が急速に高まっています。AWS、Azure、Google Cloudのいずれかまたは複数について、基本的なサービス(仮想サーバー、ストレージ、データベース、ネットワーク)の構築と運用ができることが求められます。
また、自動化・コード化のスキルも現代のインフラエンジニアには必須です。Ansible、Terraform、CloudFormationなどのツールを使ったInfrastructure as Code(IaC)、CI/CDパイプラインの構築、スクリプト言語(Python、Bashなど)を使った自動化が重要視されています。
「【関連記事】:インフラエンジニアに必要なスキルセット完全ガイド|技術からソフトスキルまで」
取得すべき資格
実務経験と並行して、資格取得も効果的な学習方法です。
**CCNA(Cisco Certified Network Associate)**は、ネットワーク分野の基礎を証明する世界的に認知された資格です。ネットワークエンジニアを目指す方には特におすすめです。
LPIC(Linux Professional Institute Certification)やLinuCは、Linuxシステムの管理スキルを証明する資格です。レベル1から3まであり、段階的にスキルアップできます。
AWS認定資格(AWS Certified Solutions Architect、AWS Certified SysOps Administratorなど)は、クラウドスキルを証明する上で非常に有効です。AzureやGoogle Cloudにも同様の認定資格があります。
これらの資格は、未経験者が知識を体系的に学ぶ指針となるだけでなく、転職時のアピール材料としても役立ちます。
「【関連記事】:インフラエンジニアに必要な資格11選|未経験からの取得順序を完全ガイド」
未経験からインフラエンジニアになる方法
未経験からインフラエンジニアを目指すことは十分可能です。計画的な学習と実践を通じて、着実にスキルを身につけていきましょう。
まず、基礎知識の習得から始めます。書籍やオンライン学習サービス(Udemy、Udemyなど)を活用し、ネットワークとサーバーの基礎を学びましょう。特に、TCP/IPネットワークの仕組み、Linuxの基本操作は優先的に学ぶべき内容です。
次に、実践的な経験を積むことが重要です。自分のPCに仮想環境(VirtualBox、VMwareなど)を構築し、Linuxサーバーをセットアップしてみましょう。Webサーバー(Apache、Nginx)やデータベース(MySQL)をインストールし、簡単なWebサイトを公開する経験を積みます。また、AWSの無料枠を活用して、クラウド環境での構築経験も得られます。
資格取得も効果的な学習方法です。CCNAやLPIC/LinuCのレベル1、AWS認定クラウドプラクティショナーなど、入門レベルの資格取得を目指すことで、体系的に知識を整理できます。
転職活動では、ポートフォリオの作成が有効です。自分が構築した環境の構成図、設定内容、トラブルシューティングの経験などをドキュメント化し、GitHubなどで公開することで、学習意欲と実践力をアピールできます。
また、未経験者を積極的に採用している企業や、研修制度が充実している企業を選ぶことも重要です。ネットワーク運用監視などのエントリーレベルのポジションからキャリアをスタートし、徐々にスキルアップしていく道もあります。
「【関連記事】:未経験からインフラエンジニアへの転職完全ロードマップ|成功率を高める5ステップ」
まとめ: インフラエンジニアの仕事内容を理解して最初の一歩を踏み出そう
インフラエンジニアの仕事内容は、要件定義、設計・構築、テスト、運用保守という4つの工程で構成され、それぞれに専門的な知識とスキルが求められます。
ネットワーク、サーバー、セキュリティという3つの専門領域があり、自分の興味や適性に合わせてキャリアを築いていくことができます。未経験からでも、計画的な学習と実践を通じて、インフラエンジニアとして活躍する道は開かれています。
まずは基礎知識の習得から始め、実際に手を動かして経験を積み、資格取得で知識を体系化していきましょう。インフラエンジニアは、IT社会を支える重要な役割を担う、やりがいのある職種です。この記事を参考に、ぜひ最初の一歩を踏み出してください。
