「警備員の仕事はAIに奪われるのでは?」という不安を抱える方は多いでしょう。
結論からお伝えすると、警備員の仕事がすべてAIに代替されることは当面ありません。ただし、業務内容は確実に変化しており、AI時代に適応するスキルが求められるようになっています。
この記事では、警察庁「令和6年における警備業の概況」の最新データを基に、警備業界の現状からAI技術の最新動向、そしてAI時代に警備員として価値を高める方法まで徹底解説します。
警備員の仕事はAIに奪われるのか?結論と根拠
結論:すべてが代替されることはない
警備員の仕事がAIに奪われるかどうかについて、結論から述べます。
短期的(5年以内):定型業務の一部がAI・ロボットに移行するが、人間の警備員は引き続き必要
中長期的(10〜20年):業務内容は大きく変化するが、人間にしかできない役割は残る
2015年に野村総合研究所とオックスフォード大学が発表した共同研究では、日本の労働人口の約49%がAI・ロボットに代替可能と試算されました。警備員もその対象に含まれています。
しかし、この研究には重要な前提があります。職業単位ではなく、業務(タスク)単位で見ると、完全に自動化される職業は9%程度にとどまるという反論も出ています。
つまり、「警備員」という職業がなくなるのではなく、警備員の担う業務内容が変化すると捉えるのが現実的です。
なぜ完全代替は難しいのか?
現時点でAIによる完全代替が難しい理由は以下の3つです。
1. 緊急時の判断力
火災、不審者侵入、急病人対応など、予測不能な状況での判断は現在のAIでは困難です。
2. 人間同士のコミュニケーション
来訪者対応、クレーム処理、トラブル仲裁など、感情を理解した対応が求められる場面は人間が担います。
3. 抑止力としての存在
「人間がいる」こと自体が犯罪抑止につながります。ロボットでは代替できない心理的効果があります。
詳細は「警備員の仕事はAIでなくなる?|将来性と生き残る方法」で解説しています。
警備業界の現状|市場規模・人手不足・DX化
警備員58万人、市場規模3.4兆円の巨大産業
警察庁「令和6年における警備業の概況」によると、警備業界の現状は以下のとおりです。
| 項目 | 数値 | 前年比 |
|---|---|---|
| 警備業者数 | 1万811社 | +1.3% |
| 警備員数 | 58万7,848人 | +0.5% |
| 市場規模 | 約3兆4,734億円 | - |
| 女性警備員数 | 4万3,077人 | 全体の7.3% |
警備員数は毎年増加を続けており、社会の安全・安心に対するニーズは依然として高い状況です。
深刻な人手不足が続く
警備業界の有効求人倍率は約7倍と、慢性的な人手不足が続いています。
人手不足の主な原因
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 夜勤・立ち仕事など体力的な負担
- 他業種と比較した賃金水準
- 若年層の警備業離れ
この人手不足を解消するために、AI・ロボット技術の導入が加速しています。つまり、AIは警備員の仕事を「奪う」のではなく、「補完する」役割を担っているのが現状です。
DX化の進展
警備業界では、デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進んでいます。
- 警備ロボットの導入
- AI映像解析による異常検知
- IoT・5Gを活用した監視システム
- ドローンによる広域監視
- 顔認証・生体認証システム
これらの技術は、警備員の負担軽減と警備品質の向上を目的としています。
AIが担う警備業務・人間が担う警備業務
AIが担う業務(自動化が進む領域)
現在、AI・ロボットが担当するようになっている業務は、定型的・反復的な作業です。
| 業務 | AI化の状況 |
|---|---|
| 定時巡回 | 自律走行ロボットによる自動巡回 |
| モニター監視 | AI映像解析による一次チェック |
| 入退館管理 | 顔認証・自動ゲートシステム |
| 駐車場誘導 | センサーによる自動案内 |
| 異常検知 | 温度・煙・ガスセンサー連動 |
これらの業務は、24時間365日休みなく稼働できるAI・ロボットの方が効率的です。
人間が担う業務(当面代替困難な領域)
一方で、以下の業務は現時点では人間の警備員が担当しています。
| 業務 | 人間が担う理由 |
|---|---|
| 緊急対応 | 状況判断と臨機応変な行動 |
| 来訪者対応 | 人間同士のコミュニケーション |
| クレーム処理 | 感情への配慮と交渉力 |
| 不審者対応 | 声かけ・説得・制止 |
| 避難誘導 | パニック時の冷静な対応 |
| VIP警護 | 高度な判断と責任 |
「協働」が主流になる
現在の警備現場では、人間とAI・ロボットの協働が主流になりつつあります。
協働の例
- ロボットが巡回 → 異常を検知 → 人間が駆けつけて対応
- AI映像解析が不審行動を検出 → 人間が状況を確認・判断
- 顔認証システムが特定人物を検知 → 人間が声かけ・誘導
この協働体制により、警備員は「監視」から「判断・対応」にシフトしています。
詳細は「AI時代に警備員に求められるスキル|価値を高める能力」で解説しています。
警備ロボット・AI技術の最新動向【2026年版】
セコム「cocobo(ココボ)」
セコムの警備ロボット「cocobo」は、AI・5Gを活用した最先端のセキュリティロボットです。
セコム セキュリティロボット「cocobo(ココボ)」紹介動画
主な機能
- 自律走行による巡回警備
- 転倒者・放置物の検知
- 煙による不審者威嚇
- 4K映像によるリアルタイム監視
- 双方向通話機能
2025年の主な動向
- 2025年4月:警備会社初の公道走行認定を取得。夜間も公道を走行できる警備ロボットとして日本初
- 2025年7月:赤坂インターシティAIRで公道を含む巡回警備を開始。公道での夜間巡回警備は日本初
cocoboは、常駐警備員の「視覚・聴覚・判断力」を備え、人間との協働により警備品質の向上を実現しています。
ALSOK「REBORG-Z(リボーグゼット)」
ALSOKの警備ロボット「REBORG-Z」は、警備員協働型の多機能ロボットです。
ALSOK 警備ロボット「REBORG-Z(リボーグゼット)」紹介動画
主な機能
- 自律移動による巡回監視
- 顔認証による不審者検知
- 火災・ガス漏れ検知
- 消火機能(初期消火)
- 多言語案内(インバウンド対応)
導入事例
| 施設 | 活用内容 |
|---|---|
| 熊本・大型商業施設 | くまモン型ロボットとして日中は案内、夜間は巡回警備 |
| 富士山静岡空港 | 国内空港初導入、警備・案内業務を担当 |
| 京都ポルタ | 2025年7月より実証実験開始、有人警備との連携検証 |
2025年の動向
2025年1月、ALSOKは「ロボットとセキュリティシステムの連携」実証実験を実施。REBORG-Zが清掃ロボットと連携して業務を行うことを確認し、ロボットフレンドリー化を推進しています。
その他の最新技術
AI映像解析
監視カメラの映像をAIがリアルタイムで解析し、以下を自動検知します。
- 不審な行動パターン(徘徊、うろつき)
- 放置物・忘れ物
- 転倒者・急病人
- 侵入者
ドローン監視
広大な敷地やアクセス困難な場所の監視にドローンが活用されています。特に、発電所、工場、港湾施設などで導入が進んでいます。
IoT・5Gネットワーク
センサー、カメラ、警報装置がネットワークで一元管理され、異常発生時には複数システムが連携して対応できる環境が整いつつあります。
詳細は「警備業界のDX化|最新技術と現場の変化」で解説しています。
AI時代に警備員として価値を高める方法
1. ITリテラシーを身につける
AI時代の警備員に最も求められるのがITリテラシーです。
習得すべきスキル
- タブレット・スマートフォンでの報告業務
- 監視システムの操作
- 警備ロボットとの連携操作
- クラウドシステムへのデータ入力
- セキュリティソフトウェアの基本操作
これらは特別な知識がなくても、現場で学べるものがほとんどです。大切なのは、新しい技術を恐れずに学ぶ姿勢です。
2. 資格を取得してスキルを証明する
警備業界には、スキルを証明する国家資格があります。
おすすめ資格
資格を取得することで、AI時代でも代替されにくい「判断力」「指導力」を持つ人材として評価されます。
3. コミュニケーション能力を磨く
AIが定型業務を担う分、人間の警備員には対人対応の機会が集中する傾向があります。
求められるコミュニケーション
- 来訪者への丁寧な対応
- トラブル発生時の冷静な説明
- クレーム対応と交渉
- 緊急時の避難誘導
- チームメンバーとの連携
これらは、マニュアル対応だけでは身につきません。日々の業務の中で意識的に磨いていく必要があります。
4. 専門分野を持つ
「何でもできる」より「これが得意」という専門性を持つことで、AI時代でも必要とされる人材になれます。
専門化の例
| 分野 | 特徴 |
|---|---|
| VIP警護 | 高度な判断力と責任、4号警備 |
| イベント警備 | 雑踏警備、群衆心理の理解 |
| 機械警備管理 | AI・ロボットの運用管理 |
| 防災管理 | 消防設備点検、避難計画策定 |
5. 変化を恐れず、学び続ける
AI時代に最も重要なのは、変化に適応する姿勢です。
技術は日々進歩しています。「今のやり方」に固執するのではなく、新しい技術・新しい業務に柔軟に対応できる人材が求められます。
学び続けるための具体策
- 社内研修に積極的に参加する
- 資格取得を目指す
- 業界ニュースをチェックする
- 新しいシステム導入時に率先して学ぶ
よくある質問(FAQ)
Q1: 警備員の仕事は将来もありますか?
A: 現時点では需要は高い状態が続いています。
警備員数は58万人を超え、有効求人倍率は約7倍と人手不足が続いています。社会の安全・安心へのニーズは根強く、AIの発展により業務内容は変化しても、人間の警備員の需要がすぐになくなることは考えにくいです。
Q2: AI時代にどうすれば価値を発揮できますか?
A: 変化を前向きに捉え、学び続けることです。
ITリテラシーを身につけ、新しい技術を活用できるようになること。同時に、コミュニケーション能力や判断力など、現時点で人間に求められているスキルを磨くこと。そして何より、変化に適応する柔軟性を持つことが重要です。
Q3: 今から警備員を目指すのは良い選択ですか?
A: 現状では多くのチャンスがある業界です。
人手不足が続いており、未経験者でも挑戦しやすい環境があります。DX化の過渡期にある今、新しい技術に触れながら経験を積める機会があるとも言えます。ただし、長期的なキャリアを考える上では、常にスキルアップを意識することが大切です。
Q4: 警備ロボットが普及したら、人間は不要になりますか?
A: 現時点では「協働」が主流です。
現在の警備ロボットは、人間の警備員と役割分担をする形で運用されています。ロボットが定型的な巡回を担当し、人間は緊急対応や来訪者対応に集中するという形です。ただし、今後の技術発展によって、この関係性がどう変化するかは予測が難しい部分です。
Q5: 若い人でも警備員になるメリットはありますか?
A: DX化を推進できる人材として活躍できます。
AI・ロボットの導入が進む中、ITに強い若手人材は貴重です。「警備×IT」の知識を持つ人材として、早い段階から管理職や専門職を目指せる可能性があります。
関連記事|さらに詳しく知りたい方へ
AI時代の警備員について、より詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
将来性について
AIによる職業代替の研究データ、警備業界の将来予測、生き残るための具体的な戦略を詳しく解説しています。
スキルアップについて
ITリテラシー、コミュニケーション能力、判断力など、AI時代に求められるスキルと習得方法を解説しています。
技術動向について
警備ロボット、AI映像解析、IoT・5G技術など、警備業界で導入が進む最新技術と現場の変化を解説しています。
まとめ
AI時代における警備員のキャリアについて、この記事のポイントをまとめます。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 現状 | 警備員58万人、市場3.4兆円、人手不足(有効求人倍率7倍) |
| AIの影響 | 定型業務は自動化が進むが、判断・対応業務は人間が担う |
| 将来予測 | 完全代替ではなく「協働」が主流、業務内容は変化する |
| 求められるスキル | ITリテラシー、コミュニケーション力、資格、専門性 |
| 最も大切なこと | 変化を恐れず学び続ける姿勢 |
「AIに仕事を奪われるかどうか」を心配するよりも、**「AI時代にどう自分の価値を高めるか」**を主体的に考えることが重要です。
警備業界はDX化の真っ只中にあり、技術の進歩によって業務内容は確実に変化しています。この変化をチャンスと捉え、自身のスキルアップに取り組むことで、長期的に活躍できる可能性が高まります。
参考資料












