警備業界でキャリアアップを目指すなら、警備員指導教育責任者の資格取得は重要なステップです。この資格は警備業法で定められた国家資格で、警備会社の教育業務を統括する責任者として法的に必須とされています。
本記事では、資格の概要から業務区分別の講習時間・費用、修了考査の合格基準まで、2026年最新の情報を詳しく解説します。現場の警備員から管理職へステップアップしたい方は、ぜひ参考にしてください。
警備員指導教育責任者とは
警備員指導教育責任者は、警備業法第42条に基づき警備会社への配置が義務付けられている専門職です。「指教責(しきょうせき)」や「指導教(しどうきょう)」とも呼ばれ、新人警備員の育成から既存警備員のスキル向上まで、教育業務全体を統括します。
警備業法における位置づけ
警備員指導教育責任者は、昭和57年の警備業法改正により制度化された国家資格です。公安委員会から資格者証の交付を受け、以下の業務を担当します。
- 教育計画書の作成:新任教育・現任教育の年間計画を立案
- 警備員教育の実施管理:法定教育(新任教育30時間以上、現任教育年間10時間以上)の実施
- 教育記録の監督:営業所に備え付ける教育関連書類の管理
- 警備業者への助言:警備員の指導・教育について必要な助言を提供
この資格は法的義務であり、適切に選任されていない場合は警備業の認定取り消しや営業停止など行政処分の対象となります。
4つの業務区分(1号〜4号)
平成17年の警備業法改正により、警備員指導教育責任者資格は警備業務の区分ごとに分割されました。営業所で取り扱う業務区分ごとに、それぞれの資格保有者を選任する必要があります。
| 業務区分 | 対象業務 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1号業務 | 施設警備業務 | オフィスビル警備、ショッピングモール警備、機械警備 |
| 2号業務 | 交通誘導・雑踏警備業務 | 工事現場の交通誘導、イベント会場の雑踏整理 |
| 3号業務 | 貴重品運搬警備業務 | 現金輸送、貴金属・美術品の輸送警備 |
| 4号業務 | 身辺警護業務 | 要人警護、ボディーガード |
自社で取り扱う業務区分に対応した資格が必要なため、複数の業務を行う警備会社では複数区分の資格保有者が求められます。
受講資格と3つの取得ルート
警備員指導教育責任者講習を受講するには、都道府県公安委員会が定める受講資格を満たす必要があります。主に3つの取得ルートがあります。
ルート1:実務経験(5年間に3年以上)
警備業務の現場経験を活かして受講資格を得る、最も一般的なルートです。
受講要件:受講しようとする業務区分において、最近5年間に通算3年以上従事していること
この「最近5年間」という期間要件は重要なポイントです。過去に長期間従事していても、直近5年間の経験が3年に満たなければ受講資格を得られません。複数企業での経験は合算可能ですが、実務経験証明書の取得が必要となります。
ルート2:2級検定+1年以上の実務経験
警備業務検定を活用する、最短での資格取得ルートです。
受講要件:該当業務区分の警備業務検定2級に合格し、その後継続して1年以上当該業務に従事していること
たとえば交通誘導警備業務検定2級に合格した後、1年以上交通誘導警備に従事すれば、2号業務の指導教育責任者講習を受講できます。警備業務開始から最短2年程度で責任者資格を取得できる効率的なパスです。
検定については「警備業務検定とは|6種類の資格と取得方法を完全解説」で詳しく解説しています。
ルート3:1級検定合格者
警備業務検定1級の合格者は、実務経験年数に関わらず講習を受講できます。
受講要件:該当業務区分の警備業務検定1級の合格証明書を保有していること
1級検定は実務経験者を対象とした上位資格のため、すでに相当の経験と知識を有していると判断されます。1級を取得できるレベルであれば、指導教育責任者としての適性も十分と考えられています。
講習の内容と費用【業務区分別】
講習は都道府県の公安委員会が指定した機関(主に各都道府県警備業協会)が実施します。業務区分ごとに講習時間と費用が異なります。
新規取得講習(時間・費用の表)
初めて警備員指導教育責任者資格を取得する場合の講習です。
| 業務区分 | 講習時間 | 受講料 |
|---|---|---|
| 1号業務(施設警備) | 47時限 | 47,000円 |
| 2号業務(交通誘導・雑踏警備) | 38時限 | 38,000円 |
| 3号業務(貴重品運搬警備) | 38時限 | 38,000円 |
| 4号業務(身辺警護) | 34時限 | 34,000円 |
※受講料は都道府県により若干異なる場合があります
講習内容は主に3つの分野で構成されています。
- 法令知識:警備業法、関連法令、警備員の権限と義務
- 教育指導技法:成人教育の理論、効果的な指導方法、カリキュラム設計
- 実技指導:護身術、交通誘導動作、各業務の実技指導方法
追加取得講習
すでに別の業務区分で資格を持っている場合、追加の業務区分を取得するための講習です。新規取得講習より時間・費用ともに軽減されます。
| 業務区分 | 講習時間 | 受講料 |
|---|---|---|
| 1号業務 | − | 23,000円 |
| 2号業務 | − | 14,000円 |
| 3号業務 | − | 14,000円 |
| 4号業務 | − | 10,000円 |
追加取得講習は既に基礎知識があることを前提としているため、業務区分固有の内容に特化した講習となります。
修了考査の合格基準(80%以上)
講習の最終日に修了考査(筆記試験)が実施されます。
| 項目 | 新規取得講習 | 追加取得講習 |
|---|---|---|
| 出題数 | 40問 | 14問 |
| 合格基準 | 80%以上の正答率 | 80%以上の正答率 |
講習内容をしっかり理解し、法令の数字(教育時間数など)を覚えていれば、合格は十分に可能です。出席は厳格に管理され、遅刻や欠席があると修了考査を受けられない場合があります。
修了考査に合格すると講習修了証明書が交付されます。その後、公安委員会に資格者証の交付申請を行います。
資格者証申請手数料:9,800円
申請から概ね30日程度で資格者証が交付されます。
資格取得後のキャリアと年収
警備員指導教育責任者に選任されると、業務内容と待遇が大きく変わります。
選任後の業務内容
選任されると現場警備業務から教育・管理中心の業務へシフトします。
主な業務内容:
- 新任教育の計画立案と実施(基本教育20時間以上、業務別教育10時間以上)
- 現任教育の実施(年間10時間以上)
- 教育記録の作成・保管・監督
- 警備員の技能向上に向けた指導
- 営業所備付書類の管理
現場勤務が減り日勤中心になることで、夜勤や不規則な勤務からの解放が期待できます。
年収への影響(+100〜150万円)
資格取得と選任により、年収の大幅な向上が見込めます。
| 職位 | 年収目安 |
|---|---|
| 一般警備員 | 300〜400万円 |
| 警備員指導教育責任者 | 400〜550万円 |
待遇改善のポイント:
- 月給制への切り替え(時給制からの移行)
- 責任者手当の支給(月額2〜5万円が一般的)
- 賞与支給率の上昇
- 退職金制度の手厚い適用
詳しい給与情報は「警備員の年収を徹底分析|平均給与・業務別・年齢別」で解説しています。
管理職・独立開業への道
指導教育責任者としての実績を積むと、さらなるキャリアパスが開けます。
社内でのキャリアアップ:
- 営業所長・支店長への昇進
- 本社教育部門責任者
- 経営幹部
転職・独立の可能性:
- 他社への好条件での転職
- 警備会社の独立開業
警備業を開業する際には、営業所ごとに警備員指導教育責任者の選任が義務付けられています。資格保有者は開業時の必須人材であり、独立を視野に入れている方には必須の資格といえます。
キャリアパスの全体像は「警備員のキャリアパス完全ガイド|一般警備員から管理職」で確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 講習は難しいですか?
真剣に受講すれば十分合格できるレベルです。講習中に教えられる内容をしっかり理解し、特に法定教育時間などの数字を覚えておけば問題ありません。合格基準は80%以上の正答率ですが、講習内容から出題されるため、授業に集中していれば対応できます。
Q. 働きながら受講できますか?
可能です。ただし講習期間(4〜6日間)は連続して出席する必要があるため、勤務先との事前調整が必須です。多くの警備会社では資格取得を推奨しており、特別休暇や受講料補助を提供している場合もあります。事前に人事部門に相談することをおすすめします。
Q. 受講料以外にかかる費用は?
受講料のほかに以下の費用が発生します。
- 資格者証交付申請手数料:9,800円
- 住民票取得費用:約300円
- 交通費(会場までの往復)
- 宿泊費(遠方の場合)
総額で6〜8万円程度を見込んでおくと良いでしょう。
Q. 資格取得後、すぐに責任者として選任されますか?
会社の状況によります。すでに選任されている責任者がいる場合は、すぐに選任されないこともあります。ただし資格保有者として優遇され、欠員が生じた際には優先的に選任されるのが一般的です。資格を持っているだけでも、会社からの評価は確実に上がります。
Q. 複数の業務区分の資格を取得するメリットは?
複数区分の資格を持つことで、会社内での希少価値が高まります。たとえば1号と2号の両方を持っていれば、施設警備と交通誘導の両方の教育を担当でき、より重要なポジションを任されやすくなります。追加取得講習は時間・費用ともに軽減されるため、余裕があれば複数区分の取得を検討してください。
まとめ:資格取得でキャリアを切り開く
警備員指導教育責任者は、警備業界でキャリアアップを目指す方にとって必須の資格です。
資格取得のポイント:
- 受講資格は「5年間に3年以上の実務経験」または「2級検定+1年以上の実務経験」
- 講習時間は業務区分により34〜47時限、費用は34,000〜47,000円
- 修了考査は80%以上の正答率で合格
- 選任されると年収100〜150万円アップも可能
まずは自分の実務経験年数と保有資格を確認し、受講資格の要件を満たしているか確認しましょう。要件を満たしていれば、地元の警備業協会に連絡して講習日程を問い合わせることから始めてください。
警備業界での長期的なキャリア形成を考えるなら、早めの資格取得をおすすめします。













